第35章

翌日の昼、大島莉理は帰国の支度を整えた。佐伯清司と同じ便の航空券を取ってある。

口では何も言わないが、胸の奥が少しだけ引っかかる。たった二日しか滞在していないのに、これほど気が抜けたのは久しぶりだった。

三人で毎日やることといえば研究の話だけ。感情の裏切りだの、結婚のこまごました揉め事だの、そういうものが全部、遠い場所へ追いやられていた。

こんなふうに身軽でいられたのは、いつ以来だろう。

……それでも、帰らなければならない。

国内には片づけるべき厄介ごとが山積みだ。楽をするのは、今じゃない。

妙な偶然で、田中辰哉も同じ便だった。

搭乗前、岩崎晴翔が若い二人に土産をこれでもかと持...

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